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記事題目

「朝鮮寺院條例の欠陥」

作者

雑誌名

『中外日報』

号数等

年月日

1916年4月23日

本文

○○總督府に於て發布せる寺院條例は内地より開敎せる各宗寺院敎會の管理經営上に変動を與へ殊に宗派又は本山の經営せるものに対して不便を與ふとて總督府は宗派を無視し内地に於ける宗派と寺院敎會との事情に通ぜらるものなりとの非難の声あるが、朝鮮開敎に關し古き歴史と莫大の資金を投じたる大谷派側の觀察する所に依れば、今回の寺院條例に○すれば寺院に専任住職を置かざるべからざるが、我大谷派の如きは昔より本山の經営に係り内地の一般末寺の如きは成立の事情を異にし従つて専任住職なるものなく一種の敎會制度を以て今日に至れり朝鮮各地に於ける大小の別院、説敎所等皆な此の組織にて經営され來たり、然るに今回總督府は京城別院のみは別院として存在を許し他の別院は別院たるを許さず寺號を公称して普通の寺院となすか、或は敎會所となるか孰れかになすべしとの意見なるが、此等の別院が今日に至るまでには多くの歳月と苦心とを要し、信徒等は普通の寺院と異る本山の別院なることを喜び維持經営を助け來りし沿革を有し、別院以下の説敎所と同じく専任住職を置かず輪番制度を以て發展を圖り來れり、然るに沿革を無視して専任住職を置き又別院を改めて独立の普通寺院となすが如きは不自然のみならず、牽ひて信徒をして別院の格式を降下せしめらるが如き感を與へ、取持上にも影響を及ぼす虞れ無きにあらず、
故に京城以外の別院は寺院と爲さずして名義を説敎所として従來通り經営せん方針を執ることゝなせり
總督府が寺院に専任住職を置くべしと云ふも真宗各派の住職と真宗以外の宗派の住職は同一にあらず、一は世襲的にして一は輪番交代なれば他宗寺院は真宗の別院の如きものにて、真宗の輪番を仮りに住職と名くると其實實に於て他宗寺院の住職と異る所なし、總督府が朝鮮各地の別院を寺院に改め専任住職を置くべしとの意志が他宗寺院の住職の如き意味あるか、真宗の世襲的住職の意味なるか其辺も總督府の見解徹底を欠き、宗制寺法に通牒せざるの議を免がる能はず、斯かる實際的の條例發布の際は如何に独立の總督政治とは云へ文部省宗敎局等の意見をも聴き充分研究して遺憾なきを期せられたきものなり、云々。

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