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記事題目

「佛敎朝鮮敎會が 東京市長に建言(方面委員採用に關し)

作者

雑誌名

『中外日報』

号数等

年月日

1926年12月15日

本文

大正八年以來朝鮮同胞の相談相手として授産、敎養、各相談等を取扱ひ現在まで持久して來て居る佛敎朝鮮協會では、彼の朴烈問題以後は敎家として非常に責任を感じ朝鮮女子苦學生に対する施設朝鮮少年の輸入敎養等を企畫し真剣に事に當つて居るが、とかく朝鮮同胞と内地人との意志疎隔を原因として不祥事を出來さし勝ちである、これには色々な理由の有ることは勿論だが其の内で(一)習俗差異より來る偏見(二)言語不充分より來る誤解等が主なるものである。そこでせめて帝都だけでも之等を匡正する方途もがなと研究中であつたが幸ひ方面委員の銓衡も近く新市長、新社會局長を迎へた事とて次の如き建言書を今回提出する所あつたと。
方面委員採用に付 建言
一、内地人にして人格有り敎養ある者若くは市民にして朝鮮語に通じ其習俗に通暁する者を必要なる方面地区に方面委員として御採用相成度事
△理由 現在東京府管内に居住する朝鮮人は五萬人と概算して居ります、之等朝鮮人の多くは習俗差異に基く偏見と言語不充分より來る誤解により幾多の不祥事を現出しつゝある状態にあります、當局が夙に此点に御視認ありて警察庁に勿論必要なる各警察高等課に内鮮係を設け管内鮮人の保護に當られ居る事に○生等の感謝○く能はざる所であります、然しながら現状より見ますると「警察署は取締る者」と云ふ外形的な浅慮より「彼等は保護者なり」の真意義を解して居ないのであります、之が爲に折角の御施設が多勞少功の結果に終る恐れがあります、幸ひ御市に於ては方面委員制度之五萬の新付同胞に対する誠意ある保護者、親切なる相談相手として閣下御施政の第一歩に於て各都市に先立ち必要なる方面地区に特に鮮人専門の方面委員を御選任下さるならば甚幸の極とする所であります。
不躾を顧みず敢て建言した次第であります。
 大正十五年十二月十一日
  東京市神田区神保町一番地 佛敎朝鮮協會理事長 文學博士 椎尾弁匡

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